音源に関わる全ての人間がコンソール前に集まっていた。
「…じゃあ始めてくれるかテギョン。」
アン社長の声にブース内でヘッドフォンをかけたテギョンが頷く。
シヌはコンソール前で、音源を上げながらテギョンにタイミングを渡した。
ピアノのソロから入る曲にテギョンは神経を集中させて行く。
青い色がうすぼんやりとグレーに同化するような音を作ろうと思った。
途中芯のつよいサビを入れ、大きく包むように終わる。
テギョンはシヌを思い描きながら声を入れ始める。
歌い出してすぐにスタッフがざわつき始めた。
マイクに顔を近づけ、集中する為に目を閉じているテギョンにその様� ��は伝わらない。
「…これは…」
アン社長が信じられないといった顔でブース内のテギョンを見つめた。
今までのテギョンにはない、優しげで、せつない歌声は
シヌの書いた歌詞に重なるように部屋中に大きく広がる。
ミナムはそんなテギョンの様子を後ろからじっと見つめていた。
大勢の人間が今同じように感じているだろうと辺りを見回す。
ふとシヌを見る。
シヌはブース内のテギョンをやさしく見守っていた。
柔らかいシヌの表情にミナムはふっとため息を漏らす。
「…なあ…テギョンさん…あんなに柔らかい声なんか出したっけ?」
ジェルミが小声で話しかけてくる。
「さあ…俺よりジェルミのが良く知ってるんじゃないの…」
そっけなく答える。
せつなく切れるように歌うテギ� ��ンの声ではない、
青い空気が身体全体を包みながらも、優しい歌声だった。
テギョンが歌い終わると一斉にコンソール前から拍手がわき起こる。
縮んだ血腫フォームの瘢痕組織ができますか?
「テギョン…聞こえる?この声…」
マイクの音量を上げて、シヌがテギョンに話しかけた。
テギョンにもブース内のざわめきが聞こえる。
なにが起こったのかわからないといった表情のテギョンは、
ヘッドフォンを片耳だけ外し髪を整えると、アン社長に顔を向ける。
「…で?この後どうするんですか?」
鋭いテギョンの視線にも全く動じないアン社長は、
いろいろなスタッフとハイタッチをかわしながら振り返ってテギョンを見た。
「いや…参った。ミナムの言った通りだった。これはテギョン、お前の曲だ…」
しみじみとテギョンを見つめる。
「お前…こんな声出せるようになったんだな…」
アン社長� ��先ほどまでのふざけた視線ではない瞳でテギョンを見つめる。
長年かけて大切に育てて来た大事な子供達が成長して行くのを
さみしそうに、うれしそうに見つめているようだった。
そのままミナムに視線を向ける。
「…悪かったな…ミナム。お前の言う通りだったよ…」
ミナムは社長を見ながら、黙って首を横に振る。
「…テギョンさん、俺びっくりして感動しちゃったあ…」
涙声のジェルミもテギョンへ素直に賛辞を送る。
テギョンがシヌに目線を向けると、シヌはうれしそうに微笑んでいた。
だからこれは君の曲だっていったじゃない…
そんな声が聞こえたような気がして、テギョンはふっと肩の力を抜いた。
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すかさずアン社長が大きな声でテギョンを呼ぶ。
テギョンがコンソール側に移動すると、いきなり社長は肩を抱いた。
「さあ、テギョン忙しくなるぞ!この歌はアルバムの目玉として盛り込んで
ミナムの曲も新しく作ってもらう事になるからな!」
メンバー全員が寝耳に水な情報に驚いて動きが止まる。
「え…ミナムの曲もやっぱり必要なんですか?」
ジェルミが空気を察しながら社長に尋ねた。
「そりゃそうだ。ミナムが歌うバラードってことでCMのタイアップが決まってるんだ。
今更外せないだろ?」
作るのはこっちだからって、簡単に言ってくれる…
さすがに社長には言えない4人は目線を 合わせながら同時にため息をついた。
アルバムに入れたテギョンの曲は、ファンの間でも話題になり、
その後シングルカットされる事になる。
シングルはその後も好調で、アルバムの後押しをし、
A.N.JELL史上最高の売り上げを達成した。
どのような予防接種は、中国に行くために必要な
「どう?テギョン…今度はアジア飛び出すって社長言ってるよ?」
飽きれたようにシヌがテギョンに話しかける。
人が大勢行き交う異国の空港の椅子は堅く、ずっと座っているのも苦痛だ。
「…ふん…どこまで本気なんだかな…」
テギョンはサングラスを外さないままシヌに答えた。
目の前では忙しそうな空港職員が知らない国の言葉で慌ただしく動き回っていた。
「ジェルミとミナムは?」
「お土産を買うんだとかのたまって免税店に走ってたぞ。
搭乗時刻まであと10分なのに…」
「あらら…間に合うのかな…」
免税店の方を見ながらシヌが心配そうな表情をする。
「大丈夫だろ…この国はよく出発が� �れる…」
「そうなの…ならいいけど…」
行き先を示すチケットを外光が差し込むガラスに向ける。
「俺たちこのままどこまで行っちゃうんだろうね…」
行く先もわからないままいろいろな国に行った。
あまりに飛びすぎて、今ここにいる国がわからなくなりそうだった。
「俺たちの音楽を喜んでくれる所があるなら…俺はどこにでも行くつもりだ…」
まぶしい光の反射する大きな機体が、待ち合いの大きな窓からも見える。
テギョンは窓の遠くを見つめながら小さい声で言った。
「…そうだね…」
シヌは自分の足下を見つめる。テギョンと並ぶ自分の靴。
「…それに…」
「…ん?…」
「…それに…お前がいれば…そこが俺の居場所だ…」
テギョンは言い終わると手に持った紙コップの中� �コーヒーを全て身体に流し込んだ。
自分の言った台詞の恥ずかしさに顔を背けるテギョンの耳は赤い。
シヌは抱きつきたい気持ちを抑えながら、
そっぽを向いたままのテギョンの耳元に口を近づける。
「…俺も…」
君がいればどこもあたたかい居場所になる
どんな荒れた地にも雨が振り、木々が生い茂る
ジェルミとミナムが遠くから手を振っている。
テギョンとシヌは堅い椅子から立ち上がると
同じ歩幅で歩き出した。
'You don't recognize me'
sing&song; Taekyung Hwang
write; Shinwoo Kang
もう一度、もう一度、
もし君が気付いてくれるなら
この手にある小さな幸せを手放す事が出来るだろうか
昨日まで触れていた唇でさえ
確信がない水のように
君だけで 君だけで
心が満たされているのに
どんなに側にいても
どれだけ身体を重ねても
人ごみに影を探し 喧噪に耳をすます
背中合わせの幸福を胸に
いつまで我慢していられる?
You don't recognize me I'll be right here
口に出せたら終わってしまう
このまま側にいられるなら
心は閉ざしたまま
それでも
あふれる思いが口を離れ 君に追いついてしまわないように
あと少し あと少し
もし君が許してくれるなら
隣で体温を感じていたい 触れる指先も愛しくて
出来るなら2人で溶け合おうよ
名前を呼んで 声を聞かせて
皮膚を通して 1つになる
無理だと知っていても
触れた肌からも
誰も知らない声も
君を感じて 心に刻み込む
誰かを思う君を
助けてあげられる?
You don't recognize me I'll be right here
現実はいつももどかしくて
甘い菓子みたいに誘惑する
気持ちから目を背けて
その肩を
抱きしめてしまえたら 何だって手放せるのに
細胞がうごめくようなキスをしよう
ひとつひとつに記憶を埋め込んで
切り離された身体に君が気付いてくれるように
You don't recognize me I'll be right here
口に出せたら終わってしまう
このまま側にいられるなら
You don't recognize me I'll be right here
現実はいつももどかしくて
甘い菓子みたいに誘惑する
気持ちから目を背けて
その肩を
抱きしめてしまえたら 何だって手放せるのに
fin
Feb.2012 masaki yamashita
テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学
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